越境学習を最大化する4つの視点。固定観念や暗黙の前提からの脱却を促す「異化思考」

2021年3月24日(水)に「社会課題起点の事業を生むために大切な観点 #JMAM越境学習 vol.3」を開催しました。
SDGsやCSR、ダイバーシティを推進する部門の方をはじめ、人事担当者、コンサルティング業の方などさまざまな業界、職種の方にご参加いただきました。

今回のキーワードは「地域に寄り添う」。
高齢化による民泊の担い手不足という課題に向き合う地域、新潟県妙高市での実践家が話し手として登壇しました。地域の中で活動をする中で出会ったリアルな事例やその時の気づき、体感に触れながら、参加者との対話を行いました。

参加者同士も、さまざまな業種・職種の即席チームを組み、ワークショップ形式で進行。他者との深い対話を生み出す“越境学習”のプロセスをベースに、企業内での活動と地域に入ることの違いや、何を聞くのか、どうやって聞くのかを自分ごとにしながらディスカッションを重ねました。

論点の提供「異化と創造的対話を促す越境学習」

日本能率協会マネジメントセンター 川村泰朗

話し手:株式会社 日本能率協会マネジメントセンター
新事業開発部長 川村 泰朗

日常と他の日常を何度も行き来する、『越境学習』

JMAMは3年ほどラーニングワーケーションというコンセプトで地域と都市の企業を結ぶような新しい学びの世界を作ることに取り組んでいます。これを『越境学習』と呼ぶこともあります。
『越境学習』とは、一言でいうと、日常と他日常の往還です。
例えば地域に行けば、そこには他の人の日常がある。それを他日常と呼びます。
サッカーでいうところのホームとアウェイのようなイメージですが、そこを行き来し、他日常で受けた刺激や気づいたことを日常に持ち帰る。この繰り返しを『越境学習』といいます。

「異化思考」で、固定観念や暗黙の前提を捉えなおす

今回は妙高市の課題を考えることになりますが、「異化」という視点についてお伝えしたいと思います。
異化とは一言でいうと「当たり前だ」と思って見過ごしていたことを、意図的に当たり前ではないものとして捉えなおすことです。
地域課題について考えるときは、一度当たり前だと思っていたことを改めて違う表現で無理やりしてみることをお勧めします。

課題解決型越境学習の学びを最大化する4つの視点

1 多様な見方ができる”別の自分“に出会う
例えば、都市の企業に勤めていて豊富な技術や知識をお持ちの方は、そのスキルで私はこのソリューションを提供できます、というアプローチをとることを考えがちですが、一度その地域に入って一緒に考えてみよう、地域の目線でとらえなおしてみよう、ということをお勧めしたいと思います。
言い換えると、ちょっと自分の所属やキャリアを置いておいて、別の自分に出会うような形で、リアルな課題に触れることが良いのではと思います。

2 課題は現地にある
地域課題解決プロジェクトは全国で行われていますが、長続きしない原因の一つが地域の課題をこねくりまわしてしまって、都会や都市部企業の目線から課題を再設定してしまうことです。まずは地域の方が主で、地域の方が納得し喜ぶ課題の設定が必要なので、問題をまっすぐ深堀していく姿勢が大事です。そのためには教えるというよりは一緒に考える姿勢が必要とお伝えしたいと思います。

3 問いをたて、ホーム(日常)に持ち帰る
今日は本当に妙高を訪れるわけではないのですが、課題をみんなで一緒に考え得た気づき、うちの会社だったらこういう視点が今までなかった、などの気づきが得られます。そういったことをホームに戻った時にみんなに伝えられることが越境学習のメリットの一つです。
本日は時間も限られていますので、多くの視点を得ることは難しいかもしれませんが、ぜひちょっとした気づきを持ち帰っていただければと思います。

4 異質な他者と積極的に関わる
現地に行けば、課題によって違いはありますが自分たちとは全く違う仕事をしている方がいます。農家さん、林業の方、地元の商売をされているなどいろいろな人がおりますけれども、自分から見て異質な人たちと積極的に交わってください。企業で行くと、同じ階層の人だけで集まって話しているとか、そういうことが起こりがちです。

以上4つの視点をご紹介しました。本日は自分の持っている固定観念や暗黙の前提みたいなものを一度取り払って課題に向き合ってみてください。


妙高市の地域課題を知る~地域におけるリアルな課題とは

話し手:竹内義晴氏
妙高市グリーン・ツーリズム推進協議会
 ワーケーションコーディネーター
特定非営利活動法人しごとのみらい
 理事長

地域の魅力を発掘するグリーン・ツーリズム

 現在、3つのわらじを履いていますが、現在は主に地域にいるので意識は地域のほうかなと思います。一方で都市部の考え方もなんとなくわかるかな、というくらいのポジションです。
 今回はそのうちの一つグリーン・ツーリズム推進協議会についてご紹介します。
 グリーン・ツーリズム推進協議会というのは、農村や漁村に滞在して地域の人々と交流を促進したり、新たな授業を作ったりなどしている団体です。僕も昨年の6月からこのチームに入って一緒に仕事をしていまして、主に教育体験旅行をやっています。子どもたちとかあるいは学生の皆さんが農家に民泊し、地域の資源を活かして体験プログラムのコーディネートをするといった活動をしています。

「自分の生活圏を出る」民泊で、思考力、判断力、表現力が育つ

 民泊というと、地域の一般家庭に入ってその地域の体験、例えば農業であれば食文化を体験して、都市部ではなかなか経験できない体験をしてもらいます。こういった体験は主体的、対話的な学びがあると言われていまして、学んだことを人生や社会に生かすことにもつながります。
 また、地域にはベテラン世代に代表される様々な知恵を持った方々がいるので、社会や生活において生きて働く知識や技能を学べます。そして、自分の生活圏を出ることで、未知の状況にも対応する思考力、判断力、表現力というものも磨かれます。この三つの力をバランスよく育てるための授業が行われています。

ディスカッションのテーマは、『人口減少』が引き起こす民泊の担い手不足

地域には課題が山積みになっていて、例えば人口減少などは深刻です。
あと10年後どうなるのだろう、人がどんどん減っていて、実際に祭りや消防団はすでに話題に上がっています。そもそも人がいなくなると今まで営んでいた地域の営みがもうできなくなってしまう、体制をどうするかのような話は僕の周りでも実際に行われていますが、なかなか答えが見出せません。

人口減少というとみんなで話し合うテーマとしては大きすぎて、難しいかもしれないので、今日は民泊教育体験旅行で実際に起こっていることをとりあげます。

「代わりに誰かがやればいい」というのは、先送りに過ぎない

妙高の教育体験旅行では、北陸新幹線の上越妙高駅に参加者が集合し、開所式などを行ったうえで民泊受け入れ家庭によって各家庭に送迎してもらいます。そこで現在起こっているのが、受け入れ家庭の高齢化です。
実際に上がっている声は「車の運転が怖いのでお迎えに行けない」「多くの子供たちを受け入れられれば良いけどそもそも軽自動車だから2,3人が精いっぱい」「送り迎えしてくれればもう少しできなくもない」などです。

このままだと教育体験旅行ができなくなってしまうということがリアルに迫っています。
そもそもこの問題は何で起きているのだろう、この問題の本質は何だろう、このままでは僕たちの授業ができなくなってしまう、今できることは何だろうという話をして、何とかしなきゃと思っています。
すぐに思いつくのが家庭以外の人が迎えに行けば良いということですが、それでは数年をやり過ごすだけになってしまう。今日は、そういったことを含め皆さんと考えられないかと思っています。


3グループに分かれたディスカッションと、内容の発表(共有)

テーマ: 「民泊受け入れ家庭の高齢化にともなう減少により、民泊や教育体験旅行ができなくなる」問題の解決に向け、何をしたらよいか

チーム1
 私たちのグループでは、高齢化で受け入れられないのであれば、若い人たちが受け入れれば大丈夫なのではという意見が出ました。
 例えば若い人たちは地元から出ていなかったりすると地元の魅力を知らないということもあるので、受け入れる人たちにすごい体験になっているということを実は気づいていないことが、担い手の高齢化の原因ではないか。
 受け入れ側がなぜ受け入れ困難なのか、民泊体験者の生の声は実際にお聞きしたいと思います。

チーム2
 利用側より提供側に課題があるということで、提供側がつらいことに絞っての議論が多かった。
 文化継承や地域の良いところを伝えるということを実施することは大変だという議論がありました。また宿泊料によってもプログラムへ力の入れ具合が顕在化していくのではということもあります。
 宿泊する側がもっと労力を使う、受け入れ側を省力化するパターンも良いのではということが出ました。

チーム3
 問題の背景や、どういったことが根本的な問題なのだろうということを話す時間が多かった。
 都会から見て直感的に思うことと、地域事情や状況を想像で話していて、問題の本質がどこにあるのかを探りがちだったということが一つありました。
 都会目線や地域の状況を知ったうえで、今まで自分が知らなかったり、考えていなかったことが今回議論の論点にあったので、一つの気づきというか学びがありました。


地域目線でのフィードバック 話し手:竹内氏

「根本的な問題はなにか?」と問われても、答えることは難しい

 各チームのディスカッションに入っていて、地域側の人間としては、多分情報不足だったのではないかなと思いました。そもそも問題がどうして起こっているのかわからなければ、具体策出せないよね、と思った方もいらっしゃるかもしれません。せっかく集まっているのに、と思った方もひょっとしたらいらっしゃるかもしれないなと思いました。

 僕は地域の中に入って都会の目線も持ちつつ仕事をしているので、他の人たちよりも何か聞かれたら答えることができるかもしれないのですが、おそらく地域のほとんどの人は、問題すら何かわからないという人も多いのではと思います。
だから色々質問されたときにうまく言語化できなくて困ったりしますが、そもそもそこまで考えたことがないっていう人のほうが多いかもしれないです。

「こうやったら良いんじゃないですか」を伝える前に、悩みに寄り添う

 今日は民泊の高齢化ということを一つテーマにあげました。
 少し話がずれてしまうかもしれませんが、地域の中で問題が起こっているときに、「こうやったら良いんじゃないですか」と、若い世代から軽いノリでいわれると、ベテラン世代の人が「そんなんで解決したら苦労しないんだよ」「そりゃそうだけどそれができたら最初からやっているよ」と返す。結果、こういうアプローチってダメなのだなという経験をよくします。

 地域の人達がうまく言葉にできることは、すごく少ないかもしれない中で、一番取り組んでほしい欲しいことは、話を聞いてほしいとか、困っていることや悩みに寄り添ってほしいということです。そういうことが地域の課題を解決するときに最も重要なのかもしれないと思いました。

都市は理想が最初。地域は理想が最後。

 実話として、地域活性化の仕事をしている東京の会社の友人が、自分の経験値で何とかしてやろう、と大きな思いをもって地域へ入っていったとき。「お前に何がわかる」と高い反発を受けてしまったそうです。自分の思いもあるのに、なんだこいつら、と彼も悩んだ時期があったと言っていました。その後、彼は都市と地域ではかかわり方が違うということに気づきました。

 都市の場合は理想から入る場合が多いんですね。「こういうことしたいんだ」という理想に共感して人が集り、そこから何をすれば良いかと楽しく議論し、何を解決したらいいかという話に入る。
 けれども、地域の場合はそうじゃなかったと言っていました。地域の場合、理想は最後だと彼は言っていました。

 最初に必要なのは体験すること、例えば一緒に飲むみたいなことや草刈りをするということなどもあるかもしれません。いろいろ話していったら「お前良いやつだな」といわれて、「ところでお前なにやってんだ?」ということになる。
 そこでやっと、今こういう仕事をしていて、というような話になる。彼は初めて地域の人の困りごとの話ができたとき嬉しかったと言っていましたが、多分地域はそういうところがあると僕自身も思っています。

 困りごとは何ですか、それだったらすぐにこれがいいんじゃないですか、と僕自身聞きながらやってしまうことが良くあるのですが、最近それではうまくいかないと思っています。

まだ本人たちすら言語化できていない問題、まずは人間関係構築が鍵

 先ほど現地のヒアリングという話も出ていて、確かにそうだなって思います。ただ、僕は昨年6月から協議会で仕事をしていますが、今の僕が現地のヒアリングを行っても、多分話してくれないのではないかと思います。
 なぜならまだ人間関係が構築されていないからです。そもそもの問題の前に、関係性がある。それが案外重要かなと思います。

 あとは若い人が代わりに担い手になる、というお話がありました。確かに、若い人が入ってきてくれることもあるかもしれませんが、今はそもそも地域全体が高齢化しているという問題もあって、民泊で地域の文化も伝えたい、残したいとみんな思っている。でも難しい、ということでまだ僕らですら言語化できていない問題がいっぱいあるような気がします。

 だからこそ、言語化できていないところから紐解いていく必要があるのだろうなと、皆さんのお話を聞きき、質問をいただきながら思いました。
 地域との壁も感じましたが、質問の中には確かにそういうこともあるなと思ったこともたくさんあり、結論としてはいろいろな課題があるので新しいことを始めなくてはいけないと僕らは思っている状況です。最後に振り返りの時間があるのでそこでお話しようかなと思います。


振り返りセッション・全体共有

まずは関係性を作る。そして初心を忘れない。

(製造業、30代、経営企画部門)
 まず関係性を作るのが一番大事。課題を手に入れる前にしっかりと現地の人たちと環境を作る。関係性を築く上では、共同体で一緒に体験することで信頼関係を作って初めてスタートラインにつくことができるということにとても気づかさました。
 いろいろ経験していくと目線がちょっと高くなるところもあるので、また初心にかえっていろいろ教えてください、というような姿勢を忘れずに行っていくということも大きな気づきになりました。

地域の悩みに寄り添う、その上で、どうやったら伝えられるかを考える

(保険業、30代、コーポレート部門)
 地域の方の悩みに寄り添うというところにハッとした気づきがあった。関係を作って信頼を得るのは、企業で仕事を進めるよりも時間がかかっていくかもしれない。
 一方で地域も外からの意見はやっぱり必要としているのではないか、地域と外をつなぐ人が必要なのではという話もしました。その際にはどうやったら外の意見が反映しやすくなるかなということを考えてみるといいよね、という話をしました。

総括 話し手:竹内氏

 地域の方と話をするときに、最も聞いてほしいことがあるとしたらこれかな、という質問があります。
 「何に困っているのですか?」という質問がシンプルで良いです。
 聞かれた本人が言葉にできていないことを、「教えてください」と言われる場合があるかもしれません。しかし、その状態で言葉にできることは多分嘘で、本当はそうじゃないかもしれないことなので、もし質問があるとしたら「何で困っているのですか」が良いです。

 また、こうすれば良いんじゃないですか、と言われるよりは、その課題に対して私たちだったらこれができます、こういう協力ができそうですという伝え方をしてもらえると関係性が作れるのではないかと思います。そっちでやればいいじゃないというのではなく、こういうことだったら協力できるので言ってください、という感じだったら嬉しいです。

 今日のワークショップがそういったことの一つになればよいと思いますし、地域にはいろいろ困っている人がたくさんいるので、皆さんのお力をいただけると良いと思います。


プログラム

第一部 15:30~15:45
 前提の異なる他者との深い対話を促す“越境学習”とは
  ・本日の進め方
  ・越境学習の考え方についてのレクチャー

第二部 15:45~17:00
 地域課題解決ワークショップ
  ・妙高市の地域課題を知る
  ・小グループに分かれて「問いかけ」についてのディスカッション
  ・ディスカッション内容の共有
  ・地域目線でのフィードバック

第三部 17:00~17:15
 振り返りセッション
  ・気づきの言語化
  ・気づきの共有

第四部 17:15~17:30
 JMAMラーニングワーケーションのご案内


募集中の『越境学習』(ラーニングワーケーション)プログラム

イノベーション創出のセンスを磨く、3泊4日の越境学習プログラム

「 there 」
各地域ならではの資源(人、文化、地理環境など)を教材にしたプログラムを造成。
最新の環境問題や先進的な取り組みを行っている地域を訪れ、フィールドワークや人々との対話から深い気づきを得ます。
十分な内省の時間を経て、新たな問いへと導くーーーそれが「there」です。

どこからでも「他日常」へ深く入り込む、オンラインの越境体験

「 here – オンライン越境体験」
それぞれの地域ならではの資源(人、文化、地理環境など)に携わる当事者達が、いま何を思い、どんなアクションを起こしているのか。全4回の連続プログラムで、何度も日常(ホーム)と他日常(アウェイ)を往来。徐々に深まっていく対話から、価値観を揺さぶる気づきや新たな問いを得ます。


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